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メタボリックシンドロームにおけるMCFANの有用性とその活用方法

はじめに

2008年4月より、わが国では虚血性心疾患や脳血管障害などの動脈硬化性疾患の原因となるメタボリックシンドロームの予防を目的とした特定健診・特定保健指導が導入されました。
大阪府立康科学センター(以下 当センター)は、昭和30年代から循環器疾患予防のための疫学研究および実践活動を行ってきた大阪府立成人病センター集団検診第1部を母体として2001年にオープンした施設です(写真1)。当センターには、世界に10か所しかない脂質標準化に関する認証資格を有する脂質基準分析室もあります。当センターの健康診断(以下 健診) には、いわゆる人間ドックとして循環器ドックに相当する「循環器病予防コース」、血液の固まりやすさや流れやすさを中心とした「血流健康コース」、冷え症を対象とした「冷え・冷房病チェックコース」等、受診者のニーズに応じた様々な「健康開発ドックコース」を行っています。
当センターでは前述の「健康開発ドックコース」の中にMicro channel array flow analyzer (MCFAN) 1)による血液流動性検査を導入し、他の検査所見や生活習慣との関連について検討しています (写真2) 。今回はメタボリックシンドロ一ムとの関連性について解析した結果を報告します。

今野_写真1

今野_写真2

メタボリックシンドロームとMCFANによる血漬流動性の開運性について

これまでの当センターの研究2) 3) において血液通過時間(秒)と正の相関がある項目はBMI、ウエスト、体脂肪率、体脂肪率、皮脂厚、ヘモグロピン、ヘマトクリット、白血球数、血小板数、血糖、HbA1c、インスリン、総コレステロール、LDL-コレステロ一ル、トリグリセライド、総蛋白、アルプミン、高感度CRP、フィブリノーゲン、血圧、負の相関があるものとしてHDL-コレステロールであることがわかっています。これらの項目にはメタボリックシンドローム (MetS) の構成因子が含まれます4)。 そこで、2005年に関連8学会から出されたMetSの診断基準(表1)に照らし合わせて血液流動性との関連性について検討しました。対象は当センターに循環器疾患や糖尿病予防のために健診を受診された30~74歳の男性221人(平均年齢 56歳)です。採血は市販のヘパリン加真空採血管を用いました。血液流動性の測定はMCFAN KH-3型、チップはBloody6-7を用いて採血から5分後に測定しました。結果はヘパリン加血液100μL通過時間を生理食塩水100μL通過時間12秒に換算して50秒以上を「血液流動性低下」としました。
対象者の特性は表2に示した通りです。MetS群と非MetS群の血液流動性低下者の割合を確認したところ、非MetS群が16%に対してMetS群は38%と統計学的に有意に高値を示しました(図1)。そこでMetS群を表1に示すMetSの構成因子の組み合わせ別に分類し、それぞれの血液流動性低下者の割合を非MetS群と比較しました。その結果、血圧高値群+高血糖群は45%(p=0.002)、血圧高値群+高血糖群+脂質異常群は41% (p=0.005)、血圧高値群+脂質異常群は35%(p=0.033)、高血糖群+脂質異常群は27%(p=0.310)のという結果が得られました(図1)。これらのことからMetSとMCFANによる血液流動性低下は関連する可能性が示唆されました。5

今野_表1

 

今野_表2

 

今野_図1

 

特定健診・特定保健指導におけるMCFAN検査の活用方法について

当センターの「循環器病予防コ離ス」はリピーターの多いコースです。「循環器病予防コース」を受診されるきっかけは“さらさら(血液流動性)”を見たい、体の全体的な状態を検査してほしい等の理由ですが、実際MCFAN検査を受けられて結果が悪かった場合は次回こそ改善しようと目的意識をもって再受診されることから、このMCFAN検査は生活習慣の改善に対して本人のやる気を促したり、健診を受診しようという動機付けのツールとして活用できると思います。したがって本年4月より導入された特定健診・特定保健指導においても効果的に活用できるかと思います。今回の特定健診・特定保健指導の指針は「内臓脂肪型肥満に着目し、生活習慣病有病者や予備群を減らすための健診・保健指導」を行うことであり、特に生活習慣改善に関する保健指導に重点が置かれています。従来の数値データによる健診結果の説明では受診者の理解を得られないことが多いため現場の医療者は苦慮していましたが、このMCFAN検査を活用することにより、そうした保健指導にも役立てられると思います。また特定保健指導では禁煙を指導することになっています。喫煙者は一般的に白血球数が増加することが分かっていますので、白血球数とも相関するMCFAN検査による血液通過時問は喫煙者で延長する傾向にあるとの報告もあります6)。また当センターの追跡調査の結果によると白血球数の多い方は少ない方に比較してその後の心筋梗塞の発症リスクが2~3倍になるという結果もでています7)。したがって血液流動性低下を伴う喫煙者の場合、MCFANを活用して禁煙を促せば、禁煙の指導ツールとしても活用できると思います。

1) Kikuchi Y., Sato K., Ohki H., Kaneko T.: Optically accessible micro channels formed in a single-crystal silicon substrate for studies of blood rheology .: Microvasc. Res., 44 (2): 226-240, 1992
2) 今野弘規 他:血液流動性低下の関連要因についての検討:第63回日本公衆衛生学会総会:595, 2004
3) 今野弘規 他:MCFANによる血液流動性と健診所見との関連:第11回日本へモレオロジー学会:60, 2004
4) メタボリックシンドローム診断基準検討委員会:メタボリックシンドロームの定義と診断基準、日本内科学会雑誌, 94(4):794-809, 2005
5) 今野弘規 他:メタポリックシンドロームと血液流動性との関連:第64回日本公衆衛生学会総会:589, 2005
6) 塚原明子 他:MCFANを用いた血液流動性と関連因子.日赤検査 40:53-56, 2007
7) Imano H, et al.: Leukocyte count is an independent predictor for risk of acute myocardial infarction in middle-aged Japanese men. Atherosclerosis 195:147-152, 2007

 

今野 弘規 先生

大阪府立健康科学センター 健康開発部 主幹兼医長

プロフィール

1997年 筑波大大学院修了 博士(医学)
大阪府立成人病センター集団検診第1部
2001年 大阪府立健康科学センター医長
2006年 現職

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